下からの観測者

訳のわからんつぶやき、もしかしたらラノベ風文章書くかも

かたしろドール

 存在とは何か。それは、理由を持って生まれるモノ。

 理由とは何か。それは、存在を持って成り立つモノ。

 そしてそれらは、認識をもって得られるモノ。認識されることで存在し、理由を持ち、そして、存在し、理由を持つことで認識される。

 

「彼女」も、「俺たちの世界」で存在している。つまりそれは、理由があったから。存在するべき理由が認識されていたからだ。

 どんな理由なのか、どんな存在なのか、どのように認識されていたのか。全てを孕んで、彼女は存在していた。

 

 これから話すのは、特別なはなしではない。俺という存在と、その周りのいろいろな存在と、「認識された」存在の、ちょっとした日常の話だ。

 ジャンルは今のところ不明。コメディかもしれないし、シリアスかもしれない。そんな話だ。

 

 それじゃ、第一話といこう。

 彼女――俺が形代と呼んだ、意思を持った人形と俺の出会いの話だ。

 

* * *  

   一話「人形」 その一

 

 「……ねえ、天木くん」

「うん」

週末、午後。場所は、とあるゲームセンター。外では雨が降っているので、雨宿り兼暇つぶしとして入った次第だ。ゲームセンターに行くのはかなり久しぶりだが、やっぱりというか、見たことのない筐体がズラズラと並んでいる。もちろん、定番なものもある程度残っているようだった。

 で、今はクレーンゲームが目の前にある。

「あれ欲しい……!」

 で、今は咲常紅香ちゃんが横で景品を見つめている。ものすごいほしそうな目で。例えるなら、餌待ちの子犬か子猫。

「あれって…… もしかしてあの毛むくじゃら猫人形?」

「うん。すっごいもふもふしてそう」

紅香ちゃんが指差すその先、確かに、「もふもふ」しそうな、少し大きめの白猫の人形が、ガラスケースのなかで鎮座している。取りやすくも、取りづらくもない場所だ。

「……えっと……」

 操作盤を見る。操作はボタン式。一回百円。七回連続だと二百円お得の五百円。

 俺の手持ち、千円札除いて六百二十円。千円以上は使いたくないので、つまり八回プレイ可能。

「……えと、どうする?」

「天木くんやって」

「え」

俺がやるの?

「彼氏っぽいことしないと、ヨーコちゃんにまたいじられちゃうよ」

「うげ」

小高葉子。俺にとって一種の驚異。隙あらば、俺をいじめるドSクラスメイト。『こんな奴彼氏にふさわしくないよモミちゃんだからこんど私と一緒に……』なんたらかんたら。

「……取れるかは、保証できないかも」

仕方ない、やるしかない。しかし、この手のクレーンゲームはほとんど無い。八回は挑めるが、自身はない。

「大丈夫、天木くんならできる!」

紅香ちゃんガッツポーズ。その自身はどこから湧いてくるのでしょうか。やるのは俺なのに。

 がしゃん、と、一枚目のコイン投入。BGMスタート。

さて、結果はどうなるでしょう。

 

* * *

 

 八戦八敗でした。

「……」

「……ぐすっ」

「あああ、泣かないでくださいお願いします下手くそで申し訳ありませんでした」

なんだろう、ものすごいヘタレっぷりが出てるような気がする。そしてもう既に、葉子さんに罵られているような気がする。

 しかし、下手くそすぎた。四回くらいは、さわりもしなかった。残りの四回は、つかみはしたが、途中で落ちた。

「……はあ」

これは、まずい。女子力ならぬ彼氏力が明らかに低い。付き合い始めてもう数週間すぎたが、結局まだ、紅香ちゃんに何もしてあげられていない。本人は気にしていないと言っていたが、世間から見ればただの無能だ。

紅香ちゃんを見る。

「……」

まだ、ガラスケースの中を見つめていた。まだ、諦めていないらしい。

「……よし」

やるしかない。俺は脳内スケジュールの、「明日は家で寝る」を「外出」に書き換えた。